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酪農
経営
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平成10年度優秀畜産表彰等事業に係る優良事例紹介
「快適な空間で牛の能力を最大限に生かすプロの酪農」
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大衡村 高橋賢一
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1.経営管理技術と特色ある取組み |
(1)楽しくおもしろいプロ農業
スキーのプロ(世界レベルの指導員)としての豊富な体験を活かし,農業もプロといえる高いレベルを目標とし,大きな夢を持って農業に取り組んでいる。都市生活者や地域の老人から幼稚園児までの多くの人が喜んでくれる,そして自分たちも楽しく生きがいを感じる農業の実現が夢であり,着実に築いてきている。
(2)ハイレベル牛群を揃える
一日最高乳量60kg以上の牛が半数近くを占め,自家産牛でも初産で60kgを突破する牛が次々にでてきている。このように資質の高い牛を揃えることに努力した結果,牛群の平均乳量が4年連続1万kg以上という県内のトップレベルを誇る高能力牛群となった。
(3)快適な空間づくり
牛の快適性を重視し,きめ細かな管理を行い,良質な粗飼料を十分に食い込ませることで,高泌乳を支えている。また,酪農は清潔な牛乳生産工場でなければならないという基本姿勢のもとに,牛舎内は清潔でゆったりとし,また周辺は花やミニハウスなどで飾られている。
(4)堆肥の有効利用
豊富な堆肥を完熟させ,十分な量を水田に施用することで良質な米を生産,またその稲わらは全量敷料や飼料として利用される。
看板を設置し販売している堆肥は好評で,供給量が追いつかないこともある。
(5)多くの訪問者の受け入れ
牛舎の壁には自作の絵,牛をかたどった面白グッズ,またアクセントのミニハウスなどが目を引く農場全体を解放し,様々な訪問者を受け入れている。仙台市民や地域の幼稚園・小学校などの訪問が年々多くなり,年間600人程度になっている。また,「日本の牧場スタンプラリー」にも加盟している。より一層環境を良くしていくために参加しているが,そのことが経営姿勢に対する良い意味でのプレッシャーにもなっている。
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2.経営の概要と実績 |
(1)労働力の構成
区分 |
続柄 |
年齢 |
農業従事日数 |
備考 |
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うち畜産部門 |
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家族(法人) |
本人 |
46 |
335 |
281 |
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妻 |
44 |
335 |
281 |
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父 |
75 |
60 |
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母 |
70 |
5 |
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常雇 |
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臨時雇 |
のべ人日
30 |
30 |
主な作業内容
搾乳,給餌等(酪農ヘルパー) |
労働力計 |
4人 |
765日 |
592日 |
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(2)土地所有と利用状況
区 分 |
実面積 |
畜産利用地面積 |
備考 |
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うち借地 |
個
別
利
用
地
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耕地 |
田 |
580 |
95 |
120 |
|
畑 |
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樹園地 |
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計 |
580 |
95 |
120 |
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耕地
以外 |
牧草地 |
350 |
350 |
350 |
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野草地 |
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計 |
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畜舎・運動場 |
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その他 |
山林 |
600 |
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原野 |
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計 |
600 |
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共同利用地 |
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(3)施設等の所有・利用状況
種 類
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構 造
資 材
形式能力 |
棟 数
面積数量
台 数 |
取 得 |
年 |
金額 (円) |
畜舎 |
牛舎 |
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353 u
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H7
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12,000,000
|
施設 |
作業場
|
|
|
H4
|
10,000,000
|
機械 |
パイプライン
バーンクリーナー
バルククーラー
トラクター |
|
|
H7
H7
H7
S63
|
8,000,000
3,200,000 |
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(4)経営実績
<<経営の推移>>
期間 |
9年1月 〜9年12月 |
経営実績 |
畜産会指標 |
経
営
の
概 |
労働力員数(畜産) |
家 族(人) |
2 |
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雇 用(人) |
(延べ) 30 |
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年間総販売乳量(kg) |
268,000 |
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年間子牛・育成牛販売頭数(頭) |
17 |
|
年間肥育牛販売頭数(頭) |
2 |
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生
産
性
|
牛乳生産
|
受胎に要した種付け回数(回) |
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牛乳1kg当り平均価格(円) |
88 |
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細菌数(個/ml) |
27万 |
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粗飼料
|
経産牛1頭当り飼料生産延べ面積(a) |
53 |
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借入地依存率(%) |
83 |
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飼料TDN自給率(%) |
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経産牛1頭当り投下労働時間(時間) |
189 |
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(5)自給飼料の生産と利用状況
区分 |
ほ場
番号 |
地目 |
面積
|
所 有
区 分 |
飼料作物
の作付体系 |
10a当り
収 量 |
収量t
|
主な
利用形態 |
牧
草
|
1
2
3
4
5
|
草地
草地
田
草地
田
|
a
250
80
50
20
70
|
借 地
借 地
自作地
借 地
自作地
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永年牧草
永年牧草
永年牧草
永年牧草
永年牧草
|
kg
(乾草収量)
1,260
800
1,500
800
|
t
31.5
6.4
7.5
1.2
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1番草:
サイレージ
2番草:
乾草
3番草:
乾草
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3.経営への取り組み |
(1)取り組みの内容と成果
父が始めた酪農であるが高校卒業と同時に受け継ぎ,スキーに打ち込みながらも逐次規模の拡大に努めた。畜舎は増築に次ぐ増築でしのぎながら牛を増やし,3年前に念願の畜舎を新築した。高能力牛群を揃え,快適な畜舎環境にして牛をリラックスさせ,自分たちも能率良く省力的作業環境の中で働いている。
地域の子供たちなどに畜舎周辺を解放し,また牧場スタンプラリーにも加入して,多くの人に楽しんでもらっている。将来はさらに環境を整備し,楽しくおもしろい空間として,また自分たちが本当に楽しいと思える酪農を築いていく,大きな夢を持っている。
(2)動機・背景・経過
スキーや4HC活動で培った人脈はかなり広い。過去に地域の家畜市場でホルスタインセールが開催されていたが,当時北海道の信頼できる育成牧場主に出会ったことで高能力牛を定期的に導入するルートができた。当初は極めて高い能力を十分生かしきれるか心配だったが,きめ細かい観察と良質粗飼料の給与により泌乳量1万kgを超える結果を得た。このことで乳牛管理に自信がつくと同時に投資しても十分返済できる見通しが立ち,農業近代化資金で牛舎を新築した。古い畜舎に比較して作業性が良く,能率的で快適な条件に整備できている。特に牛をリラックスさせたいという考え方がよく現れている。
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4.取り組みを支えた経営管理技術・生産技術 |
スポーツのプロから,今度は「農業のプロへ」と目標がはっきりしている。水田地帯の酪農の場合頭数規模が制約されることから,資質の優れた乳牛を揃えて効率の良い経営にしたいという経営方針を持ち,着実に経営規模の拡大を進めてきた。自給飼料はすべて牧草にして省力化をすすめ,水稲の管理作業や堆肥の生産販売等と調和させてきている。経産牛の1日最高乳量77キロを達成し,初産牛も日量60キロを超すものが逐次誕生している。
(1)取り組みを支えた外部支援等
村酪農振興協議会において,昭和40年代後半から村役場からの助成を受けながら乳牛の改良に取り組み村全体のレベルアップと酪農家の意識改革に高い成果を上げてきた。また,畜舎の衛生コンクールや畜舎周辺の花の植え付けなどの取り組みも展開し,村ぐるみの美化向上を図ってきた。普及や行政においても様々な研修の機会を設け,農業者としての能力向上や情報収集を支援してきた。
(2)その他
新しい情報の収集や人との交流が経営発展にとって極めて重要であるとの考えから研修や講習,交流会等には可能な限り出席している。特に東北のトップファーマーらとの交流会には欠かさず出席する。 また,家族との交流や慰労にも配慮し,北海道等に年1〜2回は家族で出かけている。そのため酪農ヘルパーは積極的に利用しており,大変ありがたい制度であると感謝している。
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5.今後の目指す方向と課題 |
(1)次の目標はプロの農業経営
酪農部門は搾乳牛を32頭まで増頭し,総乳量380,000kg(平均乳量12,000kg),売り上げは36,000千円を目標とする。
水稲部門は受託作業を拡大し,経営全体では50,000千円の販売額,所得15,000千円の確保を目標とする。
酪農部門は畜舎いっぱいまで増頭し,一部北海道からの導入と自家育成により高能力牛群を揃え,さらに生乳生産量の拡大,乳質の改善を図る。
(2)快適な空間,おもしろい農業
一方,観光客の訪問が増加するので,より美しい環境を整備し,ポニーの増頭や馬車の購入によりさらに一段と農場の魅力を高めるとともに,ソフトクリームなどの提供も計画している。また,将来は搾乳ロボットの導入により超省力ハイテク酪農の実現など夢はつきない。
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